Pearsonville, California
April 1, 2015
ヨセミテ国立公園のあるシエラネバダ山脈の裏っかわ、灼熱のデスバレーの近くに、人口17人のピアソンヴィルという町がある。
国道395号線に寄り添うようなこの町には、スモールタウンにありがちな、レトロなダイナーや、椰子の木とプール付きのモーテルは見当たらない。Shell のガソリンスタンドと併設の Subway が味気なく営業しているだけだ。
それ以外には何もない。
しかしここにはルーシー・ピアソンがいる。
約50年前、親に決められた結婚が嫌でケンタッキーの家を飛び出したルーシー・ピアソンは、自由を求めてカリフォルニアにやってきた。そしてアンディという男性と出会い、40エーカーの広大な土地を購入した。
2人はレッカー業と修理業を始めた。カリフォルニア中からボロボロの車を集めては、まだ使える部品を取り出し、綺麗にして、それを必要としている人々に売った。
時代は自動車産業の全盛期、オンボロの車たちは至る所からやってきた。
そしてルーシーは、ある部品に心を奪われていった。
それが、人類の偉大な発明の1つ、車輪を守るための、車のキャップだった。
ルーシー曰く8万(彼女の気分によって時に20万になる)以上のハブキャップが集まった。疑いなく世界一のコレクションだった。
そこに行けばどんな珍しいものでも見つかった。
ハリウッドの映画会社に撮影用の車を提供している会社が、どうしても見つからないハブキャップがあった。そこでルーシーに問い合わせた。彼女は見事に期待に応えてみせた。
YouTubeでルーシーのインタビューを見つけた。
きちんと整理されたハブキャップに驚いた。もっと大雑把な感じだと思っていた。
「これはどこのハブキャップ?」というインタビュアーの質問に軽々と答えていく様がとても小気味がいい。
映像の最後にインタビュアーはこんな質問をする。
「どうしてティーカップじゃなかったんですか?」
ルーシーは笑ってこう答える。
「だってティーカップは好きじゃないもの!」