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Enterprise, Nevada

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Enterprise, Nevada

February 1, 2015

南からベガスを望む。けれどハンドルは西へ。

情景豊かな町もあれば、徹底して無表情な町もある。

カジノとショービジネスで賑わう魅惑の街、ラスベガスの郊外に、エンタープライズという町がある。ベガスのベッドタウンで、それ以下でも以上でもない。ネーミングにも情緒がない。ただ住宅が寄り添い、集まっているだけの町だ。

コンピューターのマイクロチップにも見える

70年代に発表されたビル・オーウェンスの写真集『サバービア』に写された、増殖し続ける郊外を当事者の目線から見たものとはまた違う、より凝縮され、画一化され、効率化された、2000年代の郊外、という印象を受ける町だ。

それもそのはずで、国勢調査によると2000年の人口が14,676人。
それが2010年にはなんと108,481人まで増えている。
10年で6倍。ものすごいスピードだ。

その10年の間、休みなく、ずっと家を建て続けたのだろう。
住民同士の触れ合いやコミュニティの充実、「青い郊外の夢」などは考える暇もなかったはずだ。

コピー&ペースト&コピー&ペースト

こんな無機質な町に、とても心惹かれた場所がある。

西カクタス(サボテン!)通りと南トーリーパインズ通りが交わる辺り。空き地の向こうに住宅地があり、そしてまた空き地を挟んで、さらに向こうに他の住宅地が見える、という、隙間だらけの奇妙な場所だ。

2012年にアメリカを旅行した時、この風景を見たいがためだけに、ベガスに立ち寄った。

経験したことのない暑さと、In-N-Outのハンバーガーの美味しさに驚かされながら辿り着いたこの町は、想像よりもずっと巨大で、まるで別の世界に入り込んでしまったみたいだった。

西カクタス通り。海に浮かぶ筏のようだ

ベガスの前にオレゴンとワシントンを経験していたので、少しはアメリカのスケール感には慣れていたつもりだったけれど、ネバダは全然違った。

特に自然あふれるワシントン州で感じたように、「住まわせてもらっている」という感覚が皆無で、「土地があるから」というなんともアメリカ的な、おおらかで大胆な、まるで太刀打ち出来ない風景を目の前にして、ただただ呆然とするばかりだった。

こっちは自分のカメラで撮った写真 ©Yosuke Wainai

当日のうちに距離を稼ぐ必要があり、あまり長く留まることができなかったので、

「夕方、家庭に電気がちらほらと灯り始めるとどんな風景が見られるのだろう」
「あの隅っこの家の窓から見えるのはどんな景色だろう」

などといろんな想像を頭に詰め込んで、巨大な、途方もなく巨大なコンピューターチップの町を後にした。

無機質でも無個性でも、そんな想像をさせてくれる場所が、僕は大好きだ。

このCDを持っていくべきだった。最高の相性じゃないか!