Browning, Montana
May 1, 2015
Xファイルに「変形」というエピソードがある。
モンタナ州のインディアン居留地に「マニトゥ」という伝説の獣が現れ、白人が所有する牧場で家畜が次々と襲われる。牧場の主がマニトゥと思われる巨大な獣を撃ち殺すが、そこには獣の死体ではなくインディアンの青年が横たわっていた…という話だ。
その舞台とされたのがこのブラウニングという町だった。郡庁のカットバンクから国道2号線 ― “The Highline”を西に40マイルほど行ったところにある、人口1,000人余りのインディアン居留地だ。
Xファイルでは、鬱蒼とした森に囲まれ、白人は目抜き通りや町外れの広大な農地に住み、ネイティブアメリカンはトレイラーハウスに追いやられている、という設定で描かれていたが、実際はほぼ全体が平野部で、白人は60人ほどしか住んでいない。
自らもインディアンをルーツに持つ小説家のウィリアム・リースト・ヒート・ムーンは、1982年に出版した「ブルー・ハイウェイ」で、ブラウニングの印象をこう書き残している。
保留地の町ブラウニングは、ホピやナヴァホの集落とちがって、純アメリカ風だ―――天幕の形にコンクリートを流し込んだ古いハンバーガー・スタンドもあるにはあるが、今はそれに取って代わってドライヴイン<フゥーピー・バーガー>、モーテル<ウォーボニット・ロッジ>、家電チェーン店<ラジオ・シャック>、それにソフト・ドリンクを売るチェーン店<テイステイ・フリーズ>などが並んでいた。
「ブルー・ハイウェイ」
William Least Heat‐Moon 著/真野明裕 訳
河出書房新社/1994/09
ヒート・ムーンが車の窓を通して見つけた店はもうどこにも見当たらないが、メイン・ストリートの風景は他のモンタナの町とよく似ている。
ただ中心部から離れると、町の表情が徐々に変わってくる。
大多数の家では、芝の手入れが不十分で、土がむき出しになっている。ドライブウェイも未舗装で、バスケットゴールはボロボロ。そして野良犬がやけに多い。
お世辞にも綺麗な町並みとは言えないし、多分治安のよくない場所もあるだろう。
しかしそのむきだしの風景からは、ある種の懐かしさが漂ってくる。
これといって特筆すべきダイナーやモーテルは見当たらないが、町の西側に、プレーンズ・インディアンの資料を集めた博物館がある。そこは一見の価値があるだろう。
アメリカの多様性の一部を垣間見ることが出来る、とても興味深い町だと思う。